人と人をつなぐ「コミュニティホテル」で働く

SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE / YAMAGATA DESIGN株式会社【前編】

山、海、川とバラエティに富んだ自然やユネスコ食文化創造都市に認定された豊かな食文化、1400年以上もの歴史を誇る山岳修験の聖地「出羽三山」の信仰など、いま国内外から注目を集めている山形県庄内地域。

中でも、鶴岡市に立地するバイオ研究の拠点「サイエンスパーク」には、エネルギッシュな人々が集まり、ベンチャー企業が次々と生まれています。

「庄内地域で次世代に残るまちをデザインしよう」と、2014年8月に設立されたまちづくり会社「YAMAGATA DESIGN」もそのうちの一つ。今同社で進めているのが、サイエンスパーク内で未利用だった14ヘクタールの土地を開発し、大人と子どもそれぞれの交流施設をつくろうという壮大なプロジェクトです。

今回はそのプロジェクトの一環として、来秋開業予定のコミュニティホテル「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」で働くスタッフを募集します。求めているのは、「責任感と使命感、そして旺盛な好奇心を持って、地域の中に柔軟に入っていける人」。

プロジェクトの全体像やコミュニティホテルにかける思い、そして気になる仕事内容とは?
“完全地域主導”のまちづくりを進める山中大介社長と、コミュニティホテルの総支配人に就任する市川弘行さんにお話を伺いました。

 


東京から突然の移住。
“資本金10万円”から始まったまちづくり会社

庄内空港から田園地帯を車で20分ほど走ると、近代的な建物が立ち並ぶサイエンスパークに到着します。「YAMAGATA DESIGN」のオフィスは、このうちの一つ、先端研究産業支援センターという建物の一角にあります。

サイエンスパークは、人口減少が続く鶴岡市で長期的なスパンで新たな産業を生み出そうと、2001年に慶應義塾大学先端生命科学研究所が開設したことから始まりました。それ以降、世界で初めて人工合成クモ糸素地の量産に成功したバイオベンチャー「スパイバー」をはじめ、最先端のバイオテクノロジーを扱う6社のベンチャー企業が誕生し、日本有数のインキュベーションエリアとして成長を続けています。

今この一帯では、研究者をはじめ、地域の人がより心地よく生きられるまちをめざそうと新たなまちづくりが進んでいます。その開発整備を鶴岡市から引き継いだのが、2014年に設立された「YAMAGATA DESIGN」です。

「人と人をつなぐ」をテーマとし、国内外から訪れる研究者や企業関係者を中心に、幅広い客層を想定したコミュニティホテル「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」と、屋内外一体型の子育て支援施設「KIDS DOME SORAI」の開発整備を行っています。

2018年秋の“まち開き”をめざし、今急ピッチで工事が進行中。最先端の研究や事業展開を支える新たなまちが形になろうとしています。

代表取締役の山中大介さんは東京出身。
もともと大手不動産会社で不動産開発を行っていましたが、

「自分は社会のために何ができるのか」

と自問自答する中、慶應義塾大学先端生命科学研究所の所長が親友の父だったという縁で、サイエンスパークから生まれたベンチャー企業「スパイバー」を見学する機会を得ます。自然豊かな場所で、常識にとらわれず、世界に目を向けて果敢にチャレンジする研究者の姿に感銘を受け、すぐに入社を決意。2014年6月に鶴岡市に移住しました。

転職したのも束の間、山中さんはサイエンスパークの行政による開発スピードの遅れが問題となっていることを知ると、自ら立ち上がり、「地域からバトンを受け継ぎ、地域のための開発をスピード感を持って進めていこう」とわずか2ヶ月後に退社。10万円の資本金を元手に「YAMAGATA DESIGN」を設立したのです。

「これも、自分の意思を超えたところで運とご縁に恵まれたことに尽きます。鶴岡市役所とスパイバーの方々からこの話を聞いた時、自分が山形・庄内に来た意味は、こういうことかもしれないと思ったんです」

立ち上げ当初の資本金はわずか10万円でしたが、3年足らずで地域の金融機関や民間企業から23億円もの出資を集める会社に成長。そこには、山中さんの強い信念と、それに応える地域の人たちの半端でない応援体制がありました。

「地域の未来に対して誰よりも責任を持っているのは地元の人」という山中さん。

“地域の未来を本気で考えられるのは地域の人しかいない”という信念のもと、大手や中央の資本に頼らない完全地域主導のまちづくりを進めています。

 

地域の人たちとともにつくっていく、コミュニティホテルとは?

今回スタッフを募集するコミュニティホテル「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」は、「自然体で過ごす交流と滞在の拠点」をテーマに、美しい田園風景に調和した木造低層構造が特徴。設計は世界的建築家の坂茂氏が手がけています。

共用棟と3つの客室棟から構成され、合計約150室。さらに地元の食材を生かしたレストランやビジネスラウンジ、貸し会議室、天然温泉の大浴場、フィットネス施設なども設置します。

「地域の人たちにもっとサイエンスパークに来てもらいたいという純粋な思いがあり、宿泊機能だけでなく、地域の人が使いやすいようにさまざまな機能を持たせています。このホテルが地域と外の人との“つなぎ役”を果たしてくれるといいなと思っています」

このホテルの総支配人に就任するのが、2016年8月に長野県から鶴岡市に移住した市川弘行さん。
20年にわたり星野リゾートでリゾートホテルや旅館の運営に携わってきた、その道のプロフェッショナルです。なぜ「YAMAGATA DESIGN」に参画することになったのでしょうか。

「北海道のトマムから、千葉、石川、島根、沖縄の西表島まで、さまざまな場所で働きながら、それぞれの地域を見てきました。どこもいいところはあるのになかなか生かせていなかったり、もったいない部分があったり。そんな中、もう少し地に足のついた地域活性化を担う仕事がしたいと思うようになり、転職活動を始めたところ、『YAMAGATA DESIGN』という会社を知りました」

「山形は訪れたこともなく、鶴岡市がどんなまちかも知らなかった」という市川さんですが、東京で山中さんと会い、このプロジェクトの話を聞いたことで、ワクワク感が募っていったそうです。

「すごくおもしろい取り組みだなと思って、実際に現地を訪れました。この田園風景を見てポテンシャルを感じたのと同時に、とてもスケールが大きく、正直なところ難易度が高いなと。でもそれ以上に、ここならホテルのプロとしてやってきた経験がすべて生かせるなと思ったんです」

ここは市川さんにとって、これまでの経験を新たな形で表現できる場所。「こんなチャンスはもうないかもしれない」と、転職を決意します。入社後はこれまでの経験を生かし、ホテルの建築予算の確認や、設置する備品、レストランのメニューの検討などを行っています。

市川さんから見て、「YAMAGATA DESIGN」はどんな会社なのでしょうか。

「社長の山中は、常に先を見据えながら柔軟なスタンスを持ち、いいと思ったことはすぐにやるし、違うと思ったらすぐに方向転換します。まちにとっていいことはどんどんやっていくという勢いとスピード感に日々ワクワクしています。当然、地域のしがらみなどいろんな制約はありますが、それを乗り越えようと試行錯誤できることに、大きなやりがいを感じています」

 

「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」は、ビジネスホテルでもリゾートホテルでもなく、“コミュニティホテル”。具体的にどんなホテルなのでしょうか。

市川さんはこれについて、「地域の人たちとともにつくっていくホテル」と説明します。

 

「客層としては、サイエンスパークを訪れる研究者の方々や庄内にビジネスで来られる方々がメインに、本当のターゲットは、“庄内の人”だと思っています」

「実際に宿泊されるわけではありませんが、レストランやショップを気軽に利用してもらって、ここにいいホテルがあることを知ってもらい、どんどん家族や友人を呼んでもらいたい。またホテルで開催するマルシェなどのイベントに出店してもらったり、里山で行う自然体験教室の先生になってもらったりと、地域の方々と宿泊者の方々が交流できるような場所にしていきたいですね」

既存の型にはめることなく、ビジネス客、家族連れ、地域の人といった国内外の幅広い層が利用できる、新しいスタイルのホテルをめざしているのです。

「レストランで使う食材やショップで販売する商品も、できるだけ地元でつくられたものを選びたい。庄内全体をうまく結びつけられるような施設となって、ここから庄内の魅力を発信していきたいと思っています」

 

最先端のまちづくりに関わりながら、地域の未来をつくる仕事

ホテルの業務は、フロント、サービス、ハウスキーピングなど幅広いですが、入社後はどのような働き方になるのでしょうか。

「フロント、レストランのサービス、ハウスキーピングなど、ホテル全体の業務を網羅しながら、マルチタスクで働いてもらいたいと思っています」

「スタッフ全員が広い視野と知識を持つことで、よりよいサービスが提供できるはずです。それ以外にも、サービスの内容やレストランのメニュー、地域の方々と行うイベントなど、アイデアや企画を一緒に考えられるチームにしていきたいですね」

開業準備期間は、業務提携している地域のビジネスホテルでフロント業務、「YAMAGATA DESIGN」が鶴岡市内で運営するカフェ「FARMER’S DINING CAFE IRODORI」で接客や料理について、それぞれ研修しながら技術や知識を身につけていきます。

これまでの経験や年齢は問わず、異業種からの応募も大歓迎。ホテル部門には、今年12月に新たに8人のスタッフが入りますが、そのうちホテル経験者は2名だけ。そしてIターン者は2名いるそうです。市川さんは、「まずは庄内地域の課題に取り組みたいという志や思いが大事」と力を込めます。

 

そして、求めているのは「責任感と使命感、そして旺盛な好奇心を持ち、地域の中に柔軟に入っていける人」

「いろんなことに興味がある好奇心が旺盛な人は、すごく向いていると思います。さらには、どんなことにも情熱を持って取り組める人と一緒に働きたい。地域の中に柔軟に入って、溶け込める力も必要です」

ホテルの隣には、子育て支援施設「KIDS DOME SORAI」が同時期にオープンする予定。この施設と連携しながら、運営を行っていく計画もあります。

「『KIDS DOME SORAI』では、サイエンスパークで働く研究者を講師に招いた子ども向けの教室などを行っていきます。そこに参加した家族連れにホテルに宿泊してもらったり、逆に宿泊客にサイエンス教室に参加してもらったり。両施設が連携しながら、地域内外の子どもたちの交流ができればいいなと思っています」

同社では、サイエンスパークプロジェクトのほか、「FARMER’S DINING CAFE IRODORI」の運営をはじめ、圃場での無農薬野菜づくりなど、「人と自然をつなぐ」をテーマとしたグリーンネイバープロジェクトが進行中。入社後は、ホテル以外のプロジェクトに関わる可能性もありそうです。

「常に変化を繰り返していて、いつ何がはじまるのかわからないおもしろさがあります。とにかく展開が早いんです。ホテル以外のプロジェクトにも、自ら手を挙げて関わることができますし、ホテルと掛け持ちする働き方もありですね。むしろ、そういう柔軟な働き方をおもしろがってやってみようと思える人がすごくいいなと思います」

型にはまらない自由な雰囲気の中、最先端のまちづくりに関わりながら、地域の未来をつくる新しい動きにどんどん巻き込まれていく。間違いなく、ここでしかできない働き方や仕事ができそうです。

***

最後に、このホテルをどういう場所にしていきたいですか?

「地域の人に愛され、地域の人が集うホテルにしていきたいです。地域の人に“日常的に行こう”と思ってもらえるような場所ですね」

「レストランで食事をしたり、ラウンジでくつろいでもらったりするだけでいいんです。まずは地域の人にこのホテルを知ってもらい、“ここに友人を呼びたい”と思ってもらうことが目標です。もちろん私も、開業後はどんどん友人を呼びますよ」

世代を越えて地域内外の人が集い、自然体の庄内地域の魅力が感じられる新たな場所。ここで地域の魅力を発信しながら、街の未来を一緒につくっていきませんか?

文:中里篤美 写真:矢野航

 

YAMAGATA DESIGN株式会社【後編】はこちら!
https://turns.jp/16765

                   
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