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よんでみる{ magazine Vol.20 }
Update on 2016.10.28

継承される志。地元民と移住者で播州織の可能性を未来へと紡ぐ

特集レポート[島田製織株式会社「hatsutoki」デザイナー 村田裕樹さん]兵庫県西脇市

西脇で守り継がれる播州織を生かしたものづくりに加え、
素材となるコットン栽培を通じて新・旧(若い世代・年長者)、
内・外(地元民と移住者)のコミュニティを形成。
産地への思いが一つとなり、新しい価値をつくりだす。


播州織の里・西脇で「モード」の発信と「服育」を目ざす

北播磨地区に位置する兵庫県西脇市。四方を山に囲まれた里山のまちには、豊かな水をたたえた加古川が流れ、旧くから「播州織」の産地として栄えてきた。

約220年もの長い歴史を誇る播州織は、先に糸を染めてから織り上げる先染織物。色を組み合わせた織柄の美しさが評判となり、世界の名だたるブランドも注目。近年では、そんな播州織に魅了された移住者も増えてきている。

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東京で生まれ育った村田裕樹さんもそのひとりだ。現在、播州織の産元商社「島田製織(株)」にて、自社ブランド「hatsutoki」のデザインに携わるかたわら、「365cotton(サブロクコットン)」というプロジェクトチームの一員として、市内外の仲間とともに地元で畑を借り、綿花を栽培している。

播州織の魅力を打ち出した製品のみならず、その素材となる綿(cotton)にも向き合うことで、播州織の価値やモードの可能性を探り、豊かな生活を紡いでいきたいと考えている。


チャンレンジするための新境地を求めて移住

西脇市に移り住んで4年という村田さんは、島田製織の自社ブランド、hatsutokiのデザインから原価管理まで幅広い領域を担当。生地づくりを行う工場に足を運び、播州織の職人さんと協力して、独自の服づくりに情熱を注ぐ。

大学卒業後、服飾デザイナーを目ざし、東京の専門学校でファッションデザインを学んでいた村田さんがなぜ、最先端の流行に触れられる東京ではなく、兵庫県西脇市の会社を就職先に選んだのか。

「デザイナーとして、どうしたら差別化が図れるかを考えたときに、東京で活動するデザイナーは素材の調達ルートをつくることに苦労していることがわかりました。ならば、調達先が限られる東京から飛び出し、自分のほしい生地を探そうと、全国の織物産地をめぐりました」

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各産地で、東京では決して見ることのできない個性的な生地の数々と出会った。そこにしかない素材を使うことで、東京の若手デザイナーとは異なる服づくりが可能だと確信。自分の夢や志をかなえる場所は産地にあると、産地企業に絞って就職先を探すなか、出会ったのが播州織の島田製織だ。

西脇に限らず、織物産地では安価な海外製品の流入などにより、工場が減少。播州織の先行きも危ぶまれるなか、島田製織では将来を見据え、自社ブランドを立ち上げたばかりだった。村田さんは、当時人員を募集していなかった島田製織の社長に直談判し、入社を実現する。


しかし、実際に働いてみると、うまくはいかなかった。会社は新しい事業に積極的だったが、「下請けは下請けの仕事に徹するべき」という考えも社内に根強く残り、「ブランドを育てる」ということがなかなかまわりに理解されない。行き詰まりを感じた村田さんは事業計画書を作成し、補助金を申請して、費用を捻出した。自ら得た予算で販促を行い、徐々に業界の認知度が高まっていった。

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小さな成功事例を重ね、実績を数字で示すことで、ようやく社内でも認めてもらえるように。「YohjiYamamoto」などブランドとのコラボレーションを通して、播州織という素材の可能性もPRでき、将来を支える事業として期待されるまでになった。


播州織を通して「365cotton」という新しいコミュニティを形成

村田さんは仕事の合間をぬって、「365cotton」というプロジェクトで、仲間とともに綿花の栽培と綿の収穫も行っている。「365cotton」とは、365日着る服の素材・綿花を栽培するグループで、クリエイターを中心に、綿の畑作業とイベントを組み合わせたワークショップを開催。SNSなどで参加者を募り、交流を図りながら、綿の収穫の感動を共有し、服を愛でる気持ちをはぐくむ”服育”を提案する。

「365cotton」代表の一人、東晢平さんは大阪で自らのブランド「RBTXCO」を展開し、播州織の生地を使ったアイテムなどを販売。

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「たとえば、同じコットンシャツでもユニクロとグッチでは価格に雲泥の差がある。しかし、ほとんどの人は疑問を抱かない。種をまき、花がつき、実がはじめた綿を収穫する。一年を通してワークショップに参加してもらい、洋服が畑からつくられるストーリーを知り、服を大切にしようと思う機会につながればと考えています」


文:安田東海男  写真:清家洋
全文は本誌(vol.20 2016年12月号)に掲載


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