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Update on 2016.11.07

世界中旅をしても、また下川町に帰ってくる

下川町便り<連載1>

北海道下川町。人口3400人の小さな町には、1991年から少しずつ移住者が移り住み、自分らしい生き方を模索し、実践している人たちがいます。仕事と生活を循環(リンク)させるワーク・ライフ・リンク。下川町らしいライフスタイルを実践する人々を紹介します。


移住者の心のよりどころ
MORENA


「今日は風が強いよね。この間、隣小屋の屋根が飛びそうになったんで、さっきまで見回りに行ってたんだよ。それにしても、一気に冬がきちゃいそうだね」

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MORENAオーナーの栗岩英彦さんは、ここ北海道下川町に移住。静岡県出身で、動物や植物好きが嵩じて東京農業大学で学び、卒業後は養蜂を実践・研究する企業に勤務。独立する前に世界を見ようと、5年かけて世界1周旅行へ。帰国後、下川町に根を下ろした。

エキゾチックで、ほうっと心の奥底が整うような不思議な空間のMORENAには、下川に移住してくる人々が真っ先に魅せられ、心のよりどころになっている。



動物と自然に囲まれて
旅をしながら暮らしたい


栗岩さんが下川に移住を決めたのは、世界一周の最中だった。帰国先を考えたときに、古い友人が住んでいた名寄市を思い出し、滞在中のリスボンから「名寄の近郊で、自然が豊かな場所で暮らしたいから探してくれ」と葉書を投函した。

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「下川町に3つほど空き家が見つかった。という返事をもらい帰国後下川町へ。この家に即決して暮らし始めました。当時はまだ世界の絵は珍しかったのか、絵を売ったり個展をしたりして稼いでましたね。でもそのうち絵も売れなくなり、どうしようかと考えたとき、奥さんが『レストランにしたら』と。こんなところにレストランを開いて人なんか来るのかと思ってたけど、まあ、おもしろいかなと思ってさ」



人がやっていないことをやり
新しい文化を創っていく


それから友人も巻き込み家を改修。どうせやるなら人がやっていないことをやろうと、カレー屋をすることに。改修やスパイスにこだわり仕入れた結果、オープン日には通帳残高は2万円。お客さんがくるかすごく不安だったが、蓋を開けてみたら下川や名寄の人を中心に、洪水のように人が訪れたという。

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「地元新聞にも取り上げてもらいました。見出しは『発想の転換。離農跡でレストラン』。今も覚えています。当時、本場のインドカレーなんて食べる機会がなかったから、残していく人も多かったよ。カレーがスープみたいで食べ慣れていないから。でもそこは妥協しなかったんだ。これは、一つの食文化だから」

カレーのレシピは、1年間インドで滞在していたときに近所のカレー屋に教えてもらったもの。代わりに栗岩さんはフラメンコギターを教えてあげた。「人生の経験って、何がどこで活きるか、わからないよね」



■栗岩さんのある日の一日

ONの日
7:00  起床、犬の散歩、朝食
9:00  店の掃除や仕込み。庭から花を取ってきて活ける。
11:30 開店。合間に先週の十勝の旅のエッセイを書く
14:00 客足が落ち着いたら、家の気になるところを修理。冬に向けての準備
17:00 閉店、明日の仕入れ・買い物
18:00 夕食。お酒を飲みながら、本を読む
23:00 就寝

OFFの日
7:00  起床、犬の散歩、朝食。洗濯・掃除などの家事
9:00  オホーツクの海へドライブ。
12:00 海を見ながらおにぎりで昼食。歩いたり、石を拾ったり、スケッチしたり。
14:00 近くの温泉へ立ち寄る
17:00 地元の喫茶店アポロで夕食
19:00 家で映画鑑賞
23:00 就寝

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18歳のとき、自分のやりたいことを
やる人生を送ると決めた


「最近は、インターネットで調べて、MORENAのマスターは、世界中を旅して、お店には海外の写真や絵が飾ってあるらしい、とうちを訪ねてくる人も多いよね。インドネシアに行きたいんだけどどこがいいですか、と聞かれたり。最近聞いた、リトアニアに行ったという人の話はよかったなぁ。100か国くらい行ってると思うけど、まだ知らない国もあるからね。」

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栗岩さんは、18歳のときに結核になり、4年ほど長期間病を療養する施設サナトリウムでの入院を経験。仲間がどんどん死にゆく中で、もし生きてここを出ることができたら、自分のやりたいことをやろうと誓った。それまでは親の言うことを聞く、割といい子だったが、ここで死んだら何のために生まれてきたのかわからなくなると。

「退院したら、『いつか世界中を歩いてみたい』という子どもの頃からの夢を叶えようと。だから、旅はぼくにとってとても大切なこと。今も冬には1か月ほど店を休んで旅に出ています」



世界のどんなに素晴らしい土地に行っても
最後は下川に帰ってくる


「下川町のことは、どんどん好きになっていくね。来てすぐは、うまくいかなければアラスカにでも行こうと思っていたけど(笑)。当時は近所の人がたくさん様子を見に来てくれて、助けてくれたんだけど、その距離感がちょうどよかったんだ。気にかけてくれるけど、干渉してこない」

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街を歩いている子どもたちが挨拶をしてくれたのも印象に残っているという。

「子どもが知らない人にきちんと挨拶できる土地っていうのは、いい土地なんだよ。大人の気持ちや姿勢が反映されているってことだから。旅をしていても、そういう土地はついつい長居しちゃうんだよね。」

旅人にとって「帰ってくる場所」はとても大切と栗岩さんはいう。ここがあるから、旅ができる。自分の生きたいように生きると決めて、旅をすること、自然の中で暮らすこと、絵を描いたり文章を書いたり表現することを、どんなに反対されてもやり通してきた。これができるのは、下川で暮らせているから。ここまでやりたいことができたら、人生に悔いはないと。

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「だから、旅をしていてもふと下川の景色を思い出すときがあります。レストランの裏にある、よく釣りをする川の風景。ああ、またニジマスを釣りたいなって思うんです」

参考サイト 下川町移住交流サポートWEB タノシモ

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