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よんでみる{ magazine Vol.18 }
Update on 2016.07.08

洗練された田舎のレストラン 都会にはない価値を生み出す

識者インタビュー[ビオファームまつき・松木一浩さん]静岡県富士宮市

静岡県富士宮市で有機農家とレストランを営む松木一浩さん。
移住してから15年あまりで得た農業経営のコツや
田舎レストラン運営に込めた思いをうかがった。

自給自足に憧れ、一度は離れたレストランの世界
移住後、経営者になり新たな高みをめざす

地域経済に貢献する


僕がここで就農したのは2000年。1年間栃木の農家で農業を学んでから、移住しました。それまでは東京のフランス料理店で働いていて、田舎暮らしを紹介する雑誌を読んでは、自給自足に憧れていました。でも、実際にそういう暮らしを始めたら、4〜5年で心境が変わったんです。自分が憧れていたのは、言ってしまえば隠遁生活。世を捨てて、山にこもって仙人のような暮らしをしていていいのだろうか。定年して年金がもらえる年齢になってから、第二の人生をそのように過ごすのならわかります。けれど当時の僕はまだ40歳くらい。もっと社会貢献をしないといけないと、あるとき志のようなものが芽生えました。日本の農業の未来についても、考えるようになりました。

そこで自分の会社「ビオファームまつき」をおこし、07年に野菜のデリバリーを始め、09年に「レストラン ビオス」をオープンしました。多いときでは4ヘクタール、いまは1.8ヘクタールの畑をもち、9人のスタッフですべてをまわしています。

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田舎で会社を経営することに比べたら、最低限の畑仕事だけして暮らすのは楽なんです。ときどき農作物や加工品を売って年収50万円くらいで自給自足するのもいい。けれど、仮にそういう人ばかりが移住してきたら、その地域の経済は停滞してしまう。きちんと稼いで、所得税や地方税、あるいは法人税を払う人が増えたほうが、自治体だって潤いますよね。

移住者が畑の規模を拡大すれば、耕作放棄地の問題は解消する。会社をおこして人を雇えば、地元に新たな雇用が生まれる。店をオープンして外から人を呼べば、来た人たちが地域にお金を落とす。そういう移住者が増えたほうが、地域の人たちもうれしいはずです。


iPhoneで農作業の情報を共有


経営者になったことで、移住前に思い描いていたような、のんびりした暮らしはできなくなりました。やらなきゃいけないことがいっぱいあって、TiPhoneのTO DOリストにメモしているんですが、いつも30個くらいたまっています。それとは別に、農作業に関してのリストもつくって、スタッフのiPhoneと共有しています。うちは有機栽培で少量多品目を扱っているので、作業の種類も多い。「にんじんに追肥」「ズッキーニを収穫」・・・誰がどこにいてもiPhoneですぐに書き込んだり、確認できるようにし、タスクをこなしています。

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スローライフどころか、東京にいたときよりも時間に追われる毎日ですが、戻りたいと思ったことはありません。やっぱり、緑があって四季を感じられる、ここの環境が僕には合っています。


文:吉田真緒  写真:植誠一郎
全文は本誌(vol.18 2016年8月号)に掲載


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